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リフレクト・ワールド(The Reflected World)

第二部 第三十六章 パラディン、動く

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 ある高層ホテルの一室。大きく縁取られた窓の外に広がる東京の夜景は、よく使われる言い回しを用いれば、「宝石を散りばめたよう」だと表現出来るのだが、少なくともその部屋に滞在している者のイメージとはかけ離れたものがある。とは言っても、その者が宝飾の類いに無頓着と言うわけではない。むしろ大好きである。だが、その「好き」と言う部分には、高層階から臨める世界有数の夜景から感じられるような、一種の「品」と言うものが完全欠落しているのだ。その者は豪快で、酒好きで、よく笑い、よく喋り、喧嘩早く、品が無い。とにかく、単体としての宝石の大きさがあれば良いと言わんばかりの、かなり大振りな石を付けた指輪を両の手指にはめ、私服は金襴緞子(きんらんどんす)上等と主張し過ぎるほど派手なものばかりと言うその女は、今シャワーを浴びている最中であった。シャワーヘッドから噴き出す湯の無機質な音の中、彼女は大声でU2の“Vertigo”を歌っている。音程は正しいが、半ば酒焼けした声でがなり立てるように歌うその声からは、女が修道女、広義での聖職者とは微塵も想像出来ない。
 歌声が止み、シャワーの湯が止められた。大雑把に体に残る湯を拭いただけのあられもない姿で、女はシャワールームから出た。白く艶のある肌に、豊満な胸、魅了されない男はいないであろうと思わせる臀部を品無く振りつつ、バスタオルで髪をがしがしと拭きながら、彼女は冷蔵庫の元へ行き、中から缶ビールを取り出すと、豪快に飲み干した。次いで、新しい一缶をまた出し、プルトップを開けた。タオルの合間から覗いて見える黒髪は、漆黒とも呼べるほどに純粋な黒色で、切れ長の眉と二重のくるっとした両目に青い瞳が人懐こさを感じさせつつ、それと共に、女の雰囲気が放つ何かしらの近寄り難さと言う、相矛盾するものを覚えさせられる。
 女は素っ裸のまま、隠すものも隠さず、ビールの缶を片手に持ち、部屋の窓の前に立った。夜景の中、彼女の目に六本木ヒルズの高層ビルが映る。
「金持ちの巣窟、か」
 女は呟き、再びビールを口にした。その際に持ち上がった右腕に刺青が見える。黒い薔薇の花と棘だらけの蔓(つる)が巻き付いた十字架、そしてその下には、
“O Lord devastate all thy pain(神こそ汝の苦痛の全てを殲滅されん)”
とある。
「……富そのものではなく、富を得るまでに辿った苦難と、それを乗り越えた自分自身を、真の金持ちは誇りに思っている、か。でも、そんなの糞食らえよね。金なんてあるに越したことはないし、それで十分じゃん」
 女はそう独り言で呟くと、六本木ヒルズの建物を見つめながら、ふんと鼻を鳴らした。
 部屋のチャイムが鳴った。キンコンと言う、なかなかクラシックな音である。
「誰?」
 女はぶっきらぼうに、扉の反対側にいる訪問者に声を掛けた。
「九時だ」
 淡々とした、そして冷酷さを感じさせる、男の低い声である。
「ああ」
 女はそう一言返すと、扉を開け、外に立っている訪問者の顔を見た。夜の九時にその男と会う約束をしていたのだ。男は、女にとっては初見の訪問者、パラディン・アウグストである。
 アウグストは特徴的な鋭い灰白色の瞳で、裸で立つ女を見詰めた。その表情には全く変化が見られない。
「何よ? 女の裸にそんなに興味が無いの? あんたゲイ?」
 そう言うと、女は扉口で両腕を頭の後ろに回し、腰を下品に振って見せた。
「メア、か?」
 アウグストは表情を変えず、微動だにせぬまま訊いた。
 女の表情が瞬時に不機嫌なものに変わる。
「モイール(MAIRE)よ。メアだなんて呼ぶんじゃないよ、ドイツ野郎が」
 悪態を吐かれても、表情を些かも崩さないアウグストは、モイールと名乗った女の脇をすり抜け、室内へと入っていった。モイールは再びふんと鼻を鳴らし、扉を閉めた。
「モイール……綴りと音からすると、スコットランド人か」
 アウグストは窓の傍へ行き、その窓に背を向けて言った。外の闇と同じような黒一色の出で立ちの銀髪の男が、女に鋭い視線を向けている。
「そうよ。スコッティッシュでヴァチカンに肩持ってる女パラディンってのがいたって、別にいいじゃないよ?」
 モイールの声からは、先程の不機嫌さがほぼ消えていたが、バスローブを羽織る最中の彼女の目には、相変わらず冷ややかな何かを感じずにはいられない。それはアウグストの目にも同様のことが言えよう。
「プリスビテリアン(プロテスタント「長老派」)が主だと思っていたがな」
「あんた、パラディンの端くれでしょ? あっちにだってカトリックがいることくらい知ってるでしょう?」
「ああ、一七九三年を契機に、そちらでもカトリックの権利が認められたのだったか……」
「あんたさ、わざわざ歴史の講義でもしに来たわけ? ドイツ人はほんと、堅っ苦しいんだから」
「アウグスト、だ」
 無感情で無機質な声のままで、アウグストはここで初めてモイールに名乗った。モイールはふうと息を吐くと、よれたバスローブを両手で正し、真面目な表情で返した。
「パラディン・モイール……モイール・ドニゴール。宜しく、パラディン・アウグスト」
「まともな自己紹介が出来る女で安心した」
「面白くない。それ、ジョークのつもりかしら?」
 モイールの返事にアウグストは一言も返さず、代わりに一枚の写真をベッドの上に放った。
「誰よ、この坊ちゃんは?」
「仲間だ。いや、仲間『だった』……パラディン・ヴァンサン。パラディンとしては、まだ駆け出しの青年だった」
 写真には一人の青年が写っていた。丸みを帯びた童顔に、フレームの丸い眼鏡、赤く癖のある巻き毛が特徴的な髪をしている。まだ年端もいかぬ男だった。
「へえ、あんたの彼氏かと思ったわ」
 モイールの茶化した言葉に、アウグストは鉄面皮な表情を些かも崩さないまま、モイールを睨み返した。それがモイールの目にはどうにも可笑しく映り、モイールはぷっと吹き、けらけらと笑い出した。
「ああ、分かった分かった。で、この僕ちゃんがどうしたの?」
「恐らくは、『敵』に仕留められた」
 先程まで緩んでいたモイールの表情が締まった。
「敵、ですって?」
「そうだ」
「死んだの?」
「いや、まだ命はある。だが植物状態としてだ。肉体的異常、病変はまったく発見されていないにも係わらず、自発呼吸をするだけの『物言わぬ塊』と言う具合だ。まるで魂だけを根こそぎにされたとでも言えようか」
「何よ、それ?」
 モイールは怪訝な表情を浮かべた。
「報告によれば、『奴等』は肉体を殺さず、その魂のみを葬ると聞く」
「本山からの報告?」
「そうだ」
 アウグストはベッドに放られたままの写真を拾い上げ、黒いコートの内ポケットに仕舞い込んだ。
 モイールは腕を組んで壁に寄り掛かり、片脚を上げて足裏を壁に付けた体勢で訊いた。
「手掛かりは?」
「敵の本体については未だ皆無だ。だが……」
「だが?」
「この世に数名のものが下り立っているとも聞いている。そのうちの一人とは私も接触した」
「数名……何? 天使か神の遣いとでも?」
「いや、向こうの住人でしかない存在だろう。その者の持つ役目は知らぬが」
「へえ」
「西にいるパラディン・エウミリーニョからの報告によれば、一隻の飛行物体と共に下りて来たそうだ」
 モイールは丸い目を一層くるくると回して広げ、アウグストを見た。
「へえっ! そりゃあ凄いんじゃない? 未知との遭遇ってやつよね?」
「連中を叩けば、何かしらの新しい情報が得られるだろうが……」
 淡々とした口調のまま、アウグストは続ける。
「……所詮、連中も我々の敵であることに違いはない」
「ああ、そうね……連中の出所じゃあ、神の存在も何もあったものじゃあないってことは、私も耳にはしている」
「神の存在を脅かし、否定する者、それは全て我々の敵だ」
「あんたさ、もうちょっとその堅苦しい口の利き方、何とかなんないの? 肩が凝ってくるよ」
 モイールはげんなりした表情をして見せた。その言葉にアウグストは何も答えぬまま、更に続ける。
「私が接触した一人は、新宿辺りをうろついていた。日本人の公安関係者一人と連れ立っている」
 アウグストの言葉に、モイールは「へえ」と一言返し、飲み掛けのビール缶を手にすると、中身を全て口に流し込んだ。
「ちっ、ぬるい」
 そう言うと、モイールは缶をサイドテーブルの上に置き、アウグストに再び視線を向けた。
「てことは何? そいつはこの世の生きている人間と接触出来ているってことよね? あの世の人間がこの世の人間と?」
「しかも霊体としてではない。目に見え、触れることの出来る、我々と同じ肉体を持つ者としてだ」
「肉体を持った悪魔……まるで『オーメン』のダミアン・ソーンじゃない!」
「知らぬ!」
 軽口を叩くモイールに、アウグストは抱いていた嫌悪感を始めて表情に出した。それを見て、モイールはくすりと笑う。
 アウグストは再び淡々と語り出した。
「エウミリーニョによれば、その者の仲間かも知れぬ者の内の一人が、この東京に向かっているそうだ」
「へえ」
「しかも新幹線などに乗っていると言う。馬鹿げた話だが……」
「シンカンセン? どうやって?」
「日本の霊山からの修験者が一人、共に行動しているようだ。我々の本山からの申し出を断った、不届き千万なる比叡山延暦寺の一派の者と聞く」
 モイールはバスローブを着たまま、バスタオルを手に取り、冷たくなった髪をごしごしと拭きながら、バスルームに入った。ドライヤーの駆動音が聞こえ始める。
「続けて! 私にどうしろって言うのさ?」
 モイールの酒焼けした大声は、ドライヤーの出す音に半ば消されて届く。
「先ずはとっとと髪を乾かせ」
 アウグストは苛付きながら言い、室内の椅子に腰を下ろすと、脚を組んだ。
 十数分して、ドライヤーの音が止むと、モイールがバスルームから出て来た。そして仏頂面のアウグストに声を掛ける。
「済まないね。あんたも何か飲む?」
 しかし、無言で睨み返してくるアウグストの顔を一瞥して、口を閉じた。
「先ずは新宿の一人とこちらへ向かってくる一人、この二人を泳がすことにする。だが、我々で連中の動向は抑えねばならん。お前もそれに力を貸せ」
「尾行するってこと?」
「見張るのだ。際限なく、な。モイール、お前は私と行動を共にしてもらう」
「へ? あんたとかい? 本気で言ってんの?」
 モイールが表情を崩して訊き返した。実に嫌なものでも見るかのようなその表情を無視したまま、アウグストは続ける。
「明朝八時。このホテルの一階エントランスロビーで待て。そこでパラディン・ライアンと合流し、三人で動く」
「パラディン・ライアンって誰よ?」
 モイールが再び訊き返す。
「アメリカ人のパラディンだ。それと……」
 アウグストは壁に寄り掛かるモイールの傍へ歩み寄り、その顎を手で鷲掴みにした。その顔にアウグスト自身の顔をぐいと近付けると、アウグストは威嚇するような口調で言った。
「人の言葉に質問で返すのは大概にしろ。不愉快だ」
 互いの鼻の先が触れそうなまでの至近距離でそう言われたことに対し、モイールは不機嫌や怖れを出すのではなく、むしろにやりと笑って返した。
「このままキスでもしてみる? あんたがゲイでなけりゃあさ?」
「……何故お前のような下品な者がパラディンに成り得たのか、理解に苦しむ」
 アウグストはそう言うと、踵を返してそのまま部屋を出て行った。扉の閉まる重い音が室内に響く。
「私がパラディンになった理由ねえ……」
 モイールは閉まったばかりの扉を睨み付けたまま、ぽつりと呟いた。
「冒険心と、復讐心なのかもね」
 強調して発音された「復讐」のvの音(vengeance)が、室内の乾いた空気に妙に響いていた。

   ※ ※ ※ ※ ※ 

「で? その売人を取り逃がしたまま、お前もお前で狙われただけのお粗末な結果ってことか?」
 同僚の生活安全課の男が、多々良を哀れむような目で見ながら話し掛け、次いで首を横に振り、にやりと笑って見せた。
「言うな!」
 多々良次朗は苦虫を噛み潰したような表情で怒鳴り返した。
「しかし妙だな。神父の格好でライフルをぶっ放してくるたあ、お前が見付けたヤクの売人ってどんな奴よ?」
 同僚が腕を組んで訊く。
「それを知る前にあんな騒ぎになったんだろ? 靴を履く暇もないまま、外を走って逃げたから,足が痛えんだよ!」
「目撃者の話によると、お前、そのでっかい外人男と一緒に仲良く連れ立って逃げていたって話だぞ?」
「ちょっと待て! 奴が逃げるから俺は追った、だから同じ方向に逃げたように見えても、別に変じゃないだろう?」
「暇もなくて、靴も履かずに一キロ近くも?」
「だから……っ!」
 アウグストの襲撃を受けたマンションから約一キロ離れた路地裏で、多々良とトルソの二人はアウグストを撒くことが出来たのだった。その後、多々良はそのままトルソを連れて、小さなラーメン屋へ向かった。そこは多々良が情報屋として使っている、初老の女性の経営している店であった。女性は金さえ払えば何かと頼りになる者でもあった。とは言っても、決して守銭奴と言う感じの人物でもなく、専ら彼女が多々良のことを「可愛い」と言って、協力をしてくれていた。ただ、事によってはロハで済むわけにはいかず、彼女が言うところの「あまり負担にならないサービス価格」の範囲で、多々良は支払いをして頼み事をする相関関係にある。その店へトルソを連れ込み、彼女の二つ返事と、多々良からすれば「大枚をはたいて(「良心的」にも後払いではあるが)」、トルソを匿って貰うことにしたのである。勿論、そのことは他の生活安全課の者はおろか、新宿署員の誰もが知らぬことであった。
 多々良は自身の逃走の話を続けたくなかった。
「そんなことよりだ、市内の防犯カメラに写ってんだろ、あの『ランボー』もどきは?」
 今時、シルベスター・スタローンの往年の出演作のタイトルを持ち出しても、ぴんと来る者は少なく、多々良をからかっていたその同僚の男も、そんなうちの一人であった。
「『乱暴』もどき? ああ……」
 話は取り合えず通じた様子だった。車窓から身を乗り出し、市街地でライフルを撃つと言う無茶を仕出かしたアウグストの乗っていた車は、そのナンバーがすぐ判明し、それを所有していたカトリック教会を現在問い詰めている。車は後藤と言う神父が運転していたが、言うなればいきなりその「乱暴」もどきにカージャックされ、言われるがままに車を走らせたのだと言う。
「被害届けを出すのが遅れて、まだ出していない」
と教会側は言っているが、その理由が、後藤なる新婦が恐怖のあまり「口がしばらく利けず」、何があったのか詳細を掴めないまま、ただ時間が経ってしまったと言うものである。
「べったべたに下手な言い訳だがね。この教会を洗っているが、そんな手合いの『組織』とは全く関係性が見えてこねえんだよな。その手の証拠が何にも出て来やしねえ。まあ、後で何かしら埃が出るかもしれんが、何だか良く分からん話だ」
 同僚の言葉に多々良はただ一言、「へえ」と返すのみで話を終わらせた。

   ※ ※ ※ ※ ※  

 人通りの激しい街角で、女子高生三人が立ち、声を大にして募金を募っている。彼女達の手にしている箱には、
「新宿で被害に遭われた方々へ愛の手を」
とある。先日発生した、新宿での「畏怖」による騒動での被害者の救済を呼び掛けているのだ。無論、「畏怖」による騒動と言うのは、多々良や戸田治美、トルソ達しか知り得ない事実で、事は無差別テロとして報道されていた。
「被害に遭われた御家族の方々も多いと思われますがあ!」
「どうかお互いに助け合う心でぇ!」
「ご協力お願いしまぁす!」
 三人がそう声を張り上げている中、一人の男が近付いて行た。男はその着ている背広の内ポケットより財布を取り出すと、一万円札を一枚、箱の中に入れた。
「ありがとうございまぁす!」
 女子高生達は笑顔で言い、深々と頭を下げた。
「いやあ、君達、熱心だねえ、頑張るねえ」
 男が言う。
「あ、ありがとうございます!」
 再度頭を下げる彼女達に、男は言葉を続けた。
「ねえ、君達に質問していいですか?」
 男の声は低く穏やかで、その表情は優しげに微笑んでいる。
「はい」
 一万円札を入れられた箱を持つ女子が返事をする。
「今、君達はこうやって街を行く人に寄付を集っているよね?」
「ええ」
「以前も、ほら、東北の……ね? あの時も大勢の人達がこうやって救済キャンペーンをやっていたじゃない? 街角のボランティア、被災地でのボランティア、メディアを通じての……覚えているでしょう?」
「……はい」
 箱を持つ女子は、男が何を訊こうとしているのか分からないまま、些か不安げな声で返事をした。
「でもさ、全くなくなったわけじゃないけど、喉元過ぎればナントカって具合でさ、大勢の人達が今じゃあんまり、そのことに関心を示さなくなったと思いませんか?」
 男は笑みを浮かべたまま言った。
「え?」
「だって、そうじゃありません? あの時に何があったのか、まさか忘れた人はいないでしょうけど、皆また自分のことばかりに目を向けるようになっちゃって、あれだけ寄付や救済を呼び掛けていた大きなエネルギーが、とんでもなく下火になっている……これってさ、結局人ってのはそんな生き物なんだって、私は思うんですよ」
「はあ……」
「何だかんだ言ったって、その場ではやれ『助け合いましょう』だの、『被災地に目を向けよう』だの、『最後に勝つのは愛だ』なんて言ったって、熱(ほとぼ)りが冷めたら、結局はこの体たらく。要はですね、あのキャンペーンも、蓋を開けてみれば、自分の自尊心を満たしたい欲求の表れであって、皆がそれなりに満足しちゃったからこその終焉じゃないかって。私にはそう思えて仕方がないんです」
 三人の女子高生は互いに顔を見合わせながら、そう語る男をじっと見る。
「あの……貴方、何なんですか?」
「いやいや、気分を害してしまったらごめんなさいね。君達はそんな風にならないよう、自尊心とか己の達成感とか、つまらない一時の感情や感覚に振り回されたりしないよう、頑張って欲しいって思いましてね。これ、私なりの君達へのエールだと思ってください。では」
 不愉快な表情を浮かべた三人に手を振り、箔座松太郎はその場を去った。
 あの金色の雑兵は恐らく、この近辺にいる筈。
 箔座の体に憑く異物は、トルソがパラディン・アウグストに追われて逃げていた街、新宿歌舞伎町方面へと足を速めていた。


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