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リフレクト・ワールド(The Reflected World)

第二部 第三十五章 二人の女王

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 晴れた日。時刻はもう正午に近くなっている。若緑色の空には白い雲が点在し、肌に柔らかく風が当たる。
 エリュシネ郊外。遠くに宮殿を眺めることの出来る低い丘の上を、一台の「馬」車がゆっくり走行している。華美な飾りこそされてはいないが、純白に黄金色の蔓草模様のあしらわれた車体は、貴族か王族関係者の乗るものであると、一目で判別出来るものであった。エクウス・ゲンティル五頭に牽引された車体は、丘の上に伸びる一本の砂利道の上を音もなく進んでいたが、間もなくして、一軒の屋敷の前に停まった。クリーム色の壁に赤茶色の屋根のある、左右に広がる、二階建ての屋敷だ。その前には背の低い、様々な色の草花が広がり、その中央を、屋敷と正門との間を緩いカーブを描いて繋ぐ小道がある。
 前の御者席に乗っていた従者が降り、車体後部に回り込んで、ウォラリス・テクタイトの駆動を停止させた。軽く浮上していた車体は音もなく地上へと下りる。従者は次いで、いそいそと歩いて車体の横に出ると、扉の下に足載せ台を置き、
「到着致しました、陛下」
と言うと、ゆっくり扉を開けた。
 女王アフェクシアは従者の手を取りつつ、ドレスの裾を少しばかり上げながら降り、砂利を踏みしめた。足元から軽い音が鳴る。
 周囲に他の建物は見受けられない。閑静な地に建つ一軒の屋敷。遠くにあるエリュシネ宮殿の眺望を前に、丘の上にぽつりと建つその建物は、やはり華美なイメージは皆無ではあるが、何かしら重厚な雰囲気を醸し出している。
 屋敷の観音開きの扉が音を立てて開かれた。その中から長く白い、だが簡素なドレスを着た女性が現れた。彼女はアフェクシアの元まで歩み寄ると、ドレスの両裾を手の指で摘み上げ、深々と会釈をした。
「お待ちしておりました、陛下」
 アフェクシアは侍女らしきその女性を見、軽く頷き、続いて屋敷を見やった。
「ベネウォレンチア様の御様態は如何ですか?」
 アフェクシアは静かな声で訊いた。侍女は頭を上げ、「はい」と答える。
「陛下がお越しになられると聞かれました昨夜からは、再び落ち着かれておられます」
「そうですか」
 齢二百五十を超えようとする、かつてのレグヌム・プリンキピスの女王。王国の治世の歴史の中、黒色の異物達と壮絶な戦いを繰り広げ、王国を守ったとされる伝説の女王。五代前の女王にて、しかしそのあまりにも高齢な肉体にも係わらず気丈で、幼きアフェクシアの手を取り、遊んでもくれた女性、ベネウォレンチア。現世の者の平均年齢を遥かに超えた高齢を迎えている者は、この世界では少なくなく、また珍しいことでもなかった。だが、それでもベネウォレンチアほど長く生きる者もそう多くはない。いや、むしろ稀有と言っても過言ではなかろう。
 アフェクシアは思っていた。前世の記憶を取り戻した、中途転生者としてのアフェクシアは、この世界の者の記憶から消されてしまっているあの戦いを知る者であり、前世に生きた自分自身を知る者でもあるベネウォレンチアに会わなくてはならない、と。リーガン・アブダイクとしての意識、記憶を失ってから、この世界に転生するまでの間に、何が起こり、そして現在に至っているのかを知らなくてはならない。何故、今再びあの異物、「ペインキラー」が現れ、この世界と、併せて繋がっている現世に仇なそうとしているのかを知らなくてはならない。何故、センチュリオンやペインキラーに関する記憶が、今のこの世界に残されていないのか、記録もなく、伝説または神話として扱われているのか、アフェクシアは知りたかった。
 ベネウォレンチアの存命中に訊かなくてはならない。
 アフェクシアは侍女に促されるがまま、屋敷の中へと入っていった。
 広い玄関ロビーの右に、緩やかな曲線を描いた階段がある。毛足の長く柔らかな赤い布で敷き詰められたその階段を上っていくと、左右に伸びる廊下と共に、奥へと伸びる廊下も見えた。その奥に進むと、白く艶のある二枚の扉が前に現れた。侍女は扉をノックする。
「陛下、アフェクシア様をお連れ致しました」
 侍女が言う。彼女にとって、「陛下」とはベネウォレンチアのことを指している。この場にはかつての陛下と現在の陛下、二人の女王がいるのだ。存命中に退位した王族に対しての呼称はないので、このように言葉を使い分けているのであろう。特にこの場で「陛下」と呼ばれなかったアフェクシアにも、そのことに異を唱えるつもりは毛頭ない。
「お通ししなさい」
 弱く、しゃがれてはいても、かつての威厳を失わない老女の声が中から聞こえてきた。
 侍女は二枚の扉をゆっくりと開け、「どうぞ」とアフェクシアに入室を促した。
 室内には日差しが射し込んでいて明るい。さほど広くはない部屋ではある。淡い桜色のカーテンが風でゆったりとたなびく中、白とアイボリーの二色で整えられたベッドがあり、床には花柄をあしらった絨毯が敷かれている。あまり家具らしい家具もなく、一見殺風景にも映らないこともないが、清潔感に満ち溢れた室内である。
「よく来ましたね、アフェクシア……傍へ」
 ベッドの中のベネウォレンチアは身動き一つせず、扉口のアフェクシアに声を掛けた。
「失礼致します、陛下」
 そう言うと、アフェクシアはベッドの傍へと歩み寄り、ゆっくりした身のこなしで、ベネウォレンチアに挨拶をした。
「元気そうですね」
 ベネウォレンチアは言った。色の白い顔に、額や頬、手の指等に走る皺が顕著に目に映る。目の開き方も弱々しい。しかしそのうっすらと開いた瞼の内にある瞳の輝きは、王族であり、かつての女王であった威厳を失ってはいない。
「陛下も……ご尊顔拝謁出来、とても光栄でございます」
 アフェクシアの答えに、ベネウォレンチアはふっと表情を緩ませた。
「堅苦しい言葉は要らぬ。楽になさい」
 ベネウォレンチアはそう言い、皺だらけの手を動かして、ベッドの傍にある椅子を勧めた。
「失礼致します」
 そう答え、アフェクシアはその椅子に腰を下ろした。
「アフェクシア……貴女の瞳、何か『迷い』? ……らしきものがあるように私には見えます。如何されたか?」
 アフェクシアの心情を見透かしたようにベネウォレンチアは訊いた。
 訊かねばならない、と思いながらも、それをこの体の弱った女性に切り出してもいいものか否か、話そのものをどう切り出せば良いのか、アフェクシアは戸惑いを感じていたのだ。
「陛下、陛下は私がまだ幼い頃、よく遊んでくださいました……お覚えになられておられますでしょうか?」
「ああ、そうだったわね……確か、この別荘の、この部屋だったわ。女王の座を退いてから、私はこの屋敷……別荘に隠居した……お前は殊の外可愛い娘でしたもの……一緒に本を読んだり、積み木をしたりしましたよね、覚えているわ」
「ありがとうございます。私も忘れたことはありません。あの時、陛下は私をよく『リジー』と呼ばれて可愛がってくださいました」
「そうね……」
「あの『リジー』という名前、私の名前と共通点がありませんでしたので、不思議に思っておりました」
「ああ、幼なかったお前は訊いたものだったわ。『どうして私をリジーとお呼びになるの?』って」
「陛下は言われましたね……リジー、リジェンドラという花から採ったものだと。お庭にも咲いていましたわ、あの黄色く可愛らしい花、そして、如何に人に踏まれようとも、決して枯れたりせず、強き生命力で頭を上げ、あの小さく可憐な花を咲かせる……リジェンドラ……」
「ええ」
「……陛下、ですがそれはリジェンドラからお採りになられたのとは、また別の由来があったのでしょう……」
 ベネウォレンチアは軽く首を横に動かし、リーガンの目を見詰めた。
「別の、由来?」
「はい。私の……かつての名前、リーガンからお採りになられたのではないでしょうか?」
 数秒の沈黙の間が二人の合間を流れた。ベネウォレンチアはアフェクシアから視線を寸分たりとも離さないまま、大きく息を吸い、そして吐いた。
「思い出したのですね……」
 ベネウォレンチアの声は穏やかさを保ったままだった。全く揺らぎがない。
「ええ。リーガン・アブダイク……私の前世での名前でした」
 アフェクシアはじっとベネウォレンチアの目を見詰め返した。
「カーテンを……」
 ベネウォレンチアが言った。
「え?」
「カーテンを……開けてもらえぬか? エリュシネの宮殿を……見たいのです」
 アフェクシアは頷き、立ち上がると窓辺へ行き、桜色のカーテンを開けた。窓越しに宮殿の黄金色の塔が見える。
「風がお体に障りませんか?」
「これ位の風、どうもありません。ありがとう、アフェクシア」
 アフェクシアは椅子へと戻り、再び腰を下ろした。
「人の魂の転生には……」
 ベネウォレンチアが口を開く。
「……特に決まった周期はありません。向こうの世界で生きていた者が、その肉体を離れ、この世界にやっては来ても、それには時間を要したり、また間もなくして転生したり……何時、誰が転生するかは分からないものです。ですが……」
 ここでベネウォレンチアは息を継いだ。
「アフェクシア、貴女の場合は分かりました。私がそれを知りたいと望み、『心の球体』に映し出すことが出来たのですから」
「陛下は、私の転生を待たれていた、と?」
 アフェクシアは驚いたような表情を浮かべて訊いた。
「ええ……貴女には過酷かもしれませんが、再び、再びあの戦いが起こった時、民を導くことの出来る存在となる、強き信念と、人の絆を信じる貴女を……私は待っていたのです」
「あの戦い……」
「ええ。あの黒き負の思念との戦いです」
 ベネウォレンチアの口調に若干、力が入っている。
「あれは……決して消えぬ。人が、いや心を持った生命がこの世界に、この宇宙に……この世界と繋がっていた、かつての貴女がいた世界以外にも、様々な『世界』と言うものはある。そこに生きる者が存在する限り、あのような負の思念も存在する」
「私達と……対になった存在、とおっしゃられるのですか?」
「そう。相反する二極は、その二つで一つとする性格も帯びている。光ある所に必ず闇もあります。勿論、その逆も言えますね」
「陛下、教えて戴きたいのです」
 アフェクシアは縋るような声を出した。
「あの後、何があったのですか? あのペインキラー……負の思念体は何故また現れたのでしょう?」
 ベネウォレンチアは見つめていた天井から、アフェクシアの顔へと視線を戻して言った。
「何故現れたのか……それに答えはありません。また、何故今になって、と言う質問にもまた答えはないでしょう。現れるべくして現れた、たまたまその時が巡って来たから現れた、としか言えません。大事なのは、それに対し如何に接するかでしょう」
 アフェクシアは口をつぐんだ。
「リジー、いえ、アフェクシアよ、宮殿の地下にある『心の球体』は、この世界と繋がっている向こうの世界のことを知り得る以外の力も持っています。それで私は知りました……貴女のいた世界は消えた……闇の軍勢はずっと遠くから、貴女のいた世界、社会の存在する所よりも遥か遠くから進軍してきた。そして、貴女の元へ到達し、補給を得つつ更に軍を進めた。貴女達人間の負の思念を吸い上げながら……」
「あれは、ペインキラーは世界中から子供を奪っていきました。そして天変地異を起こし、世界を蹂躙していった……」
「連中にとって、子供の心、子供の抱く負の思念とは、純粋に力のあるものとして捉えているようです。子供は互いに結び付いた両親にとっての愛の結晶、未来への力……それを奪い去ることは、自分自身の身に直接傷を付けられることよりも辛い……」
 アフェクシアはジョシュアのことを思い出した。何処かで転生し、生きていると思われる息子ジョシュア・アブダイク。一人息子を腕から無理矢理奪い去られた時の悲しみ、絶望感がアフェクシアの内側から湧き上がる。
「だが、あれは……連中は想定外の反撃を受けました。アフェクシア、貴女からです」
 ベネウォレンチアの言葉に、アフェクシアは驚きを以って返した。
「反撃? あの『絶望』と名乗っていた思念体に対して、ですか?」
「それだけではない。貴女は他にも連中と対峙したでしょう……恐らく、連中はそれを見、そして記憶した……センチュリオンにとっても同じでしょう。たとえ微々たるものであったとしても、貴女の存在、貴女のような存在は、連中にとっては脅威となる」
「私のような存在……」
「貴女の周りにいた者達の中にもいたでしょう? 連中を退け、そして浄化するあの光の力を持った者が」
 フリッツ・エマーソン、シュウ・アンザイ、フリッツの婚約者であった女性、そして父……
「そして、貴女の思いは、貴女のいた世界の者達、失いし子を愛し続ける親達の心の光を呼び寄せた」
 あの白い光の奔流は確かに「絶望」を押し流していった。あの光はアフェクシアが呼んだものであったと、ベネウォレンチアは言う。
「連中は一部の者達をこの世界に残し、貴女のいた世界、宇宙を『無』へと帰した後、再び力を得るまでの間、眠りに就いた……今ここで現れている者達は、その時の残存隊のようなものでしょう。知らせは私の耳にも届いております。また暴れ始めたのでしょう? 白簾連峰方面から現れ、村を消した……」
 アフェクシアは黙って頷いた。
「そう……恐らくは、貴女が女王の座に就き、この世界を治める頃合いを見計らったのかもしれないですね」
「私が、女王に就いたことがきっかけと?」
「連中にとって、貴女の存在は己の屈辱の証にもなりましょう。感情だの愛だのを消すと言ってはいるが、連中ほどそうした思いに囚われている存在もないでしょうね」
 ベネウォレンチアはそこまで話すと、ふうと息を吐いた。
「私は……恐れたのです」
 再びベネウォレンチアは話し始める。
「あの……貴女が『ソリタリー・シェル』と呼んだ、連中の『巣』とも呼ぶべき場所から光が溢れ、この世界を覆っていた黒き思念が流され、浄化されていった後……生き残った民がその恐怖の記憶に憑かれ、恐怖を抱えたまま生き続けることを……民のそうした思いは、たとえ表面に出さず、潜在意識の中に留めたままとしても、決して消えることはない……生きる者にとって、いや全ての生命にとって、そうした感情の存在を完全に消し去ることは不可能です。それが我が身を守るための本能的な盾になることもあるのですから」
 アフェクシアはベネウォレンチアの言葉に、ただ黙って耳を傾けていた。
「ですから、私は決めたのです。そうした民の負の感情を一時的でもいいから、封じてしまおうと……少なくとも、思い出すことさえなければ、再び負の思念が満ち、あのような異物の軍勢を招き寄せる時間を稼げると……私は『心の球体』を使い、禁断の所業を行いました」
「禁断の……所業?」
「ええ。この世界に生きる全ての者達の、私以外の全ての者達の心を、あの球体の持つ力を通じ、あの戦いや連中の存在に関する記憶を封印したのです」
「何ですって……」
 アフェクシアは驚きを隠せなかった。あの球体にそんな力があったとは、そして全ての人々があの思念体やセンチュリオンのことを、伝説程度にしか捉えなくなっていたのが、ベネウォレンチアが意図的に行ったことの結果であったとは、アフェクシアの全く思いもよらぬことであった。
「ですが、人の感情を他者が神にでもなったかのように操作し、抑え込むなど……不可能でした。封印されし記憶は徐々にではあるが、再び表へと現れようとする。だから私は続いて、そうした心や感情を制御するための教育や躾の方法を、この世界に新たに転生した者に対して行うようにしたのです。それがあの『ススティネーレ政策』です……アフェクシア、水を……」
 アフェクシアはテーブルの上にあった水呑みを手に取り、それをベネウォレンチアの口に運んだ。ごくりという弱き音がベネウォレンチアの喉から聞こえる。飲み込み辛そうだった。年齢のせいで、食べ物や飲み物が喉を通るには、それなりの苦痛が伴うようになっているのだ。
 ベネウォレンチアは再び息を吐く。
「……中途転生者の所遇が問題でした。彼等はこの世界に純粋たる転生者として生を受けたのではない。かつて生きていた世界での記憶や感情を、そのままこの世界に持ち込んで生まれ変わった者達です。負の思念の伝播が、彼等を始まりとして起こる可能性もあった。だからこそ、私は政策の名の下に彼等を隔離、再教育を施すようにしました」
「陛下……」
「それが正しいか否かの判断が私には出来ません。私自身にとっても、これは迷いや苦痛となりました。ですが、私にはそうすることしか出来なかった……あの災厄を再び起こさせないように、いや再発する時を出来るだけ遅らせるには、そうするしかなかったのです……」
 アフェクシアはベッドに手を伸ばし、ベネウォレンチアの右手を握った。
「『そうするしかない』……笑わせる言葉よ。己のした行為を正当化するための言い逃れでしかないわ」
 ベネウォレンチアの表情が哀しげに笑うように、アフェクシアには見えた。
 アフェクシアが口を開いた。
「ペインキラーは……現世から生きたままの子供を、この世界に引きずり込んでいます。それが一人、ということしか分かっておりません。そして……その父親もまた、空間近衛騎士団の力を借りて、この世界に来ております」
「何と……」
 ベネウォレンチアは、改めてアフェクシアに目を見た。
「私は……この父子に……私と同じ轍(わだち)を踏ませたくないのです。決して……あの思いをした者は、あの記憶を残している者は……もう私一人で十分です、陛下」
 アフェクシアの頬を一滴の涙が流れた。それをベネウォレンチアは、弱々しくも右手をゆっくりと上げ、その指で拭った。
「その二人に……必要以上に感情を移してはなりません」
 ベネウォレンチアは言った。
「……と言いたいところですが、貴女の気持ちは決まっているのでしょう?」
 アフェクシアは頷いた。リーガン・アブダイクであった頃の自分が、今何処にいるかも分からぬ須藤一樹に、そして失った一人息子ジョシュアが須藤啓吾に重なる。
「私はこの父子を救わねばなりません。そして……ペインキラーを、まだあの強大な力を取り戻していないうちに封じなければならないのです、陛下」
 ベネウォレンチアは静かに頷いた。
「貴女自身が、これから成すべきことを真に理解しているのなら……お行きなさい。そして、貴女の成すべきことをやり遂げるのです。貴女なら出来ると私は信じています、リジー……」
 そう言うと、ベネウォレンチアは静かに目を閉じた。
 アフェクシアは静かに立ち上がり、眠りに入ったベネウォレンチアにゆっくりと、そして深々と頭を下げ、光射し込み柔らかな風の入る部屋を出た。

 扉の閉じた後、一人ベッドに横たわるベネウォレンチアは、目を閉じたまま呟いた。
「闇を背負い、一人で歩いている貴女……貴女がその手で光を掴む時が必ず来ることを、私は固く信じています」

 アフェクシアの心には今や、寸分の迷いもない。


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