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リフレクト・ワールド(The Reflected World)

第二部 序章 クミコからの手紙

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 列車はラムジャプールの駅を出発し、その車窓に何枚もの外壁に囲まれた市街地の光景を映し出していた。初めてここに来た時と比べると、須藤の心には希望と心強さが芽生えていた。
 須藤一樹と澤渡祐、そしてメイス・フランジェリン・ベノワの三人は個室車両に乗り合わせていた。
「これ、クミコから預かってきたわ」
 メイスが須藤に、一通の封筒を手渡した。
「手紙?」
 須藤はその封筒を受け取ると呟いた。
 クミコは今朝早く、ラムジャプール治安維持局分署からの任意出頭要望を受け、一人で出頭していたのだ。そのために須藤が出発の際、見送りには来ていなかった。
「連中、アムリスから何て聞いていたのかしらね」
 メイスの口振りは不満げだった。
「結局は末端の連中だからな。クミコ自身のことだけじゃない、俺達に対しても余計な嫌疑が掛からないために出掛けたんだろう。何せ俺達は、ちょっと前までは第一級テロリストだったからな」
 須藤のはす向かいの席に座っていた澤渡は言った。その眉間には皺を寄せている。
 須藤は二人の顔を交互に見つつ、その封筒を開けた。中に数枚の便箋が入っている。須藤はそれを開いた。
 文章は擬似ラテン語などではなく、須藤にも読める、しっかりとした日本語で書かれたものであった。

   ※ ※ ※ ※ ※ 

 一樹。
 貴方が突然、流れ星のように現れて、そう幾日も経たないうちに、私達の住む環境は激変しました。遥か先にある光を今この手で掴み、仲間達と共に踏み入れた闇を抜け切ることが出来ました。絶望に打ちひしがれ、悲しみに暮れる仲間達に、希望をもたらせてくれました。
 本当に、本当にありがとう。
 今、皆が光の下にその一歩を踏み出し、そして新たな世界への切符を手に入れられました。一樹、貴方のおかげなのです。この感謝の気持ちは、こんな紙面では書き表すことが困難なくらいです。
 ありがとう。

 一樹。
 貴方は今、困難に真っ正面から立ち向かわんとしています。この先も様々な壁が貴方の前に立ち塞がるやもしれません。
 忘れないでください。貴方の心の内には神様がいます。希望という名の、可能性という名の神様が、貴方の心の内から貴方を導いているのです。
 人はよく、「運命」という言葉を口にします。「これは運命だ」。今目の前にあることが当然だと受け止めたり、或いは絶望に負けて全てを放り出したりするような時、そんな時に口にされる言葉、運命。
 今が幸せか不幸なのかはその人が自由に決めること。そして、それに「運命」という名称をあてがっているに他なりません。そんな運命などというものに貴方が負けないであろうことを、私は祈っております。いや、決して負けないと信じています。
 貴方は目的があってここにいるのです。この広い世界に貴方は二人としておりません。過去にもいなかったし、未来にもいないのです。貴方は何かの必要を満たすために、この世界に足を踏み入れたのです。ご愛息のことを捜し出し、一緒に元の世界に戻ることが第一でしょう。
 ただ、私はそれだけではないと思うのです。
 自分は無神論者だと言った私が、こんなことを書くのも妙だと思われるかもしれませんね。ですが、貴方の内なる神様は、貴方に伝えようとしていることがあり、そして貴方をここへ導いた。そう思えてならないのです。
 貴方のご愛息は今、必死に耐えていると思います。そして先へと、目の前に続く道を前へと進んでいることと信じています。貴方を父とするご愛息ならば、きっとどんな嵐の中に飛び込んでも、必ず抜け切る力を内に秘めているとも私は信じております。貴方がたが一日も早く再会され、抱擁し、その愛を確かめられる時が来ることを祈っております。
 
 もう一つ。駄文ばかりでごめんなさい。
 闇を拒絶しないでください。光と闇は表裏一体。コインに表と裏があるように、陽の心もあれば陰の心もあります。センチュリオンやその使い魔達も元々は、貴方と同じ人間が持っていた心に他なりません。そしてそれは、誰もの心の内にあるもの。貴方には、光と共に闇をも受け入れられる心の広さを持っていただきたいのです。
 勿論、闇に染まり、闇に従順になる必要はありません。
 私は思うのです。光や闇、陽の心に陰の心、ポジティブとネガティブ、そうした二極のものの更なる先に達することが出来れば、人は皆己の枷から解き放たれることが出来ると。
 コップに水が半分入っているとします。その半分の水を「半分しかない」と嘆くか、「まだ半分もある」と喜ぶか。ただ、その双方とも実は人の思い込みでしかありません。目の前にあるのは、コップに水が半分入っているという現実です。全ての事象をあるがままに受け入れられる、そんな心の容量、力量が人には必要だと私は思います。
 目の前に立ち塞がる闇をむげに拒絶せず、しかし染まらず、貴方なりに受け入れ、そしてそれを越え、その先の世界に達することが出来ますように。

 一樹。
 こんなこと書いて気分を悪くされたら謝ります。ですが、貴方の旅はこの世界でご愛息をお捜しになられていることだけではないのです。
 全てを乗り越え、更なる天地をご愛息と貴方、一緒に見ることが出来るものと私は信じています。
 負けないでください。私の心は、いや、私達皆の心は貴方と共におります。私達はいつも貴方と一緒です。

 旅の御無事と、ご愛息との再会を心より祈っております。
                           
                                               久美子

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