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 ←主人公についての備忘録(!) →第三部 第十七章 シュウとテレサ 【4】
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リフレクト・ワールド(The Reflected World)

第三部 第十六章 シュウとテレサ 【3】

 ←主人公についての備忘録(!) →第三部 第十七章 シュウとテレサ 【4】
 中途転生者のみが暮らすクウィンチリウスは、現在レグヌム・プリンキピス国内にて中途転生者を「軟禁」し、「再教育」を施すススティネーレ政策が施行される以前にその礎が築かれた町である。その礎とは、同じ境遇を持つ転生者達が集まって築いた一つの村であった。国の補助を受けつつ次第に拡大した村は、今では小規模なりとも「都市」とよべるくらいのものとなっていた。
 そもそも「都市」たるものに固定化された定義はない。ある程度の人口の集中、それに伴う商業圏や住居圏の拡大によって成されるものであろうが、その規模自体に都市と呼ぶことの出来る基準なるものはない。中央官庁が存在するために王国の首都となっているエリュシネも、決して大規模な都市ではない。シナスタジアの首都であるゼフィロトは、複数の市街地が連担するコイベーションと言う現象が故に巨大化した「都市圏」ではあるが、レグヌム・プリンキピスにはそう呼ぶに値する都市はそう多くない。その中において、クウィンチリウスは食糧供給、水、電力、そして通信と言ったライフラインがあまり整備されているとは言えず、物資不足による混乱がしばしば発生していた。インフラストラクチャーと呼べるものは一線のみ走る鉄道と、空間近衛騎士団が主に利用する空港程度で、前者は他の自治体との接続が二カ所としか出来ておらず、物資の流通には十分な機能を果たせていない。後者はその性格上、物資の輸送拠点と言うよりも、時折王都や周辺から政府の命令で送られる「補助」物資(救援物資と呼ぶに等しい)が時たま届く程度のもので、とてもクウィンチリウスの繁栄を助けるものとは言えない。また中途転生者ばかりが集まるコミュニティよりも、他方に集中して王国政府は目を向けているので、クウィンチリウスは無計画なままに拡大した、まさにスプロール現象の一代表例と成り果ててしまっている町である。
 その治安も決して良いわけではない。ただ、広い国内において「中断された人生の記憶を引き継いだまま、無理矢理に新たな人生を送るよう、見も知らぬ新たな世界へと放り出された」境遇を分かち持つ中途転生者ばかりが集まっていることで、相互援助の精神はそれなりに息づいている。だが犯罪の発生率も高く、空間近衛騎士団の駐屯部隊が時折介入すると言う事態も発生していた。市民達のストレスも溜まっている。
 そんな中、人間とは異なる種族であるビストリアンに対して、そのストレスが噴出していた。人より劣る畜生の生まれ変わりとしか多くの人間の目には映っておらず、そのような「弱い」存在は苛立つ思いの捌け口でしかなかった。
 流浪の民ビストリアンは決して裕福ではない。旅の途上で行き倒れになる者も多い。そんなビストリアンの子供が二人、商店のパンを盗んだとして、街路の一部に追い詰められ、石やらゴミやらを投げ付けられている光景に、シュウ・アンザイは出くわした。
「盗んじゃいないって言ってるじゃないか!」
 黒い猫の姿をしたビストリアンが叫ぶ。声からしてまだ少女でしかない。
「お腹空いて、でも買えないから見ていただけだ!」
 その少女はもう一人のビストリアンの子供を庇うようにして抱き、そして彼等を追い詰めた群衆へきっとした目付きを向けている。
「やかましい!」
 群衆の内の、一人の大柄な男が大声でまくし立てる。
「お前等みたいな薄汚い野良風情が、人間様の物に目を付けるなんざ、腹立たし過ぎるってんだ!」
 一人の女が併せて声を上げる。
「しかもあたし達みたいに言葉を話すなんて……ああ、気色悪い! この化け物!」
 ビストリアンと言う種族を初めて目にしたシュウは呆然として、罵倒の的になっている二人を見詰めていた。その二人は怪我をしている。黒猫の姿をした少女は額から血を滲ませ、しかし必死にもう一人を庇っている。投げ付けられる石を自身の体を盾にして守っている。その少女の傍でもう一人がわあわあと泣き叫びながら、身を震わせている。茶色の体毛のあちこちに血が滲み、腕はあらぬ方向へぐにゃりと折れている。
「もう……もう止めて! この町から出て行くから……お願いだから!」
「生かして逃がすか、この糞ったれがあ!」
 痩せた体型の別の男が棒を持って前に進み、少女の肩を殴り付ける。
 少女の切り裂くような悲鳴が轟く。
「おい……やめろ!」
 シュウは声を上げ、棒を振る男の元へ走り出ると、その棒を持つ手首を力強く握り、その動きを止めた。
「……何だお前?」
 男がシュウを、下から上へと舐め回すように視線を移動させて睨み付ける。
「事情はよく分からないが、これだけ痛め付けてまだやる気なのか? 彼等は無抵抗じゃないか! しかも二『匹』だけなのに、こんなに大勢で……」
「うるっせえ!」
 男は腕を振り解こうとするが、シュウの手は男の手首から離れない。なおも激しく動く男に対し、シュウは無言でその腕を後ろへと捻り込み、男を抑え付けて地面へと突っ伏させた。
「あんた、よそ者か?」
「でなきゃ、転生したばかりの新参者か?」
 そうした言葉が群衆から聞こえてきた。
「よそ者だろうと何だろうと、こんな様を見せられて黙っていられるか!」
 シュウの言葉には怒りが露わになっていた。
「そいつ等ビストリアンは俺達にとっちゃ、厄介もんでしかねえんだよ!」
「盗みはやらかすわ、汚い病気は撒き散らすわ、おまけに人の言葉まで……けがらわしい!」
「悪魔の使いだ!」
「うちの子はビストリアンに大怪我を負わされたわ!」
「うちじゃ倉庫を破られた!」
「この町の悪事にゃ大抵こいつ等が絡んでるんだ! 許しておけるか!」
「見せしめにぶっ潰してやれ! こいつ等、ネズミやゴキブリと同じじゃねえか!」
 口々に群衆から罵詈雑言が飛び出してくる。堪らずにシュウも声を張り上げる。
「そうしたことをこの子等が全てやったと言うのか! だったら裁く法律ってのがあるだろう! こんな私刑(リンチ)まがいなことが許されるのか!」
 その声は群衆の心には届かない。
「そんな連中にゃ人様のほうなんぞ関係ねえ!」
「お前は害獣なんぞに情けを掛けるのか?」
「人間として恥ずかしい野郎だ!」
 人として恥ずかしい? この言葉にシュウの怒りは沸点に達した。
「あんた達こそ恥ずかしくないのか! こんな酷いことをして、あんた等こそ恥ずべき連中にしか見えない!」
 一瞬、群衆のざわめきが止んだ。しかし、それは瞬時の嵐の前の静けさでしかなかった。
「こいつごと叩きのめせ!」
「潰せ!」
「ビストリアンの片持ちする奴も一緒だ!」
 数人の男達が棒や板、箒に刃物等を手にして前へ出る。
「……止めておけ」
 シュウが男達を睨む。男達は構いもせずに走り向かってきた。だが元軍人であり、格闘術にも長けるシュウの相手にはならない。次々と男達は打ち倒され、地面の上を転がった。
 次の瞬間、石つぶてがシュウの額を撃った。いくら格闘術、護身術に対し腕に覚えがある者でも。多数の投石行為には太刀打ち出来ない。シュウはバランスを崩しながらも、二人のビストリアンの子供達の前に進み、そして二人を庇うようにして腕を広げて抱え、自らの背を群衆に向け、頭を低めに構えた。
 黒猫の少女が唖然とした表情をシュウに向けて言う。
「何で……あんた人間だろ? 何で……」
「人間だろうと『猫』だろうと関係ない! こんなことが許せるわけないだろ……!」
 そう言うシュウの目は、少女には優しく見えた。その目の脇に赤い筋が数本流れ落ちていく。
「駄目だ……駄目だよあんた! あんたもあいつ等に……」
「んんんんん……っ!」
 苦痛にシュウは声を漏らす。二人のビストリアンを抱えて走って逃げようにも、この場所は袋小路になっていて逃げ場がない。シュウはやれやれと思った。転生だか生まれ変わりだか分からないが、こんな目に遭ってまた早々に殺されるのか? じゃあ次は何処へ転生するのだろうか? そんな思いがふと頭の中をよぎる。しかし、この子等は逃がしてやりたい。
「あんた……この子をお願い」
 黒猫の少女が言った。
「弟なの……私の一人きりの弟……」
 そう言って、少女はシュウの腕を潜り抜けて、群衆の前へと飛び出した。
「お、おい!」
 シュウが叫ぶ。
「お前らぁぁぁぁぁっ!」
 少女が怒りに満ちた雄叫びを上げた。
「そうやって同じ人間にまで……お前等は!」
 しかし少女はその場で、金属板を持った男にその後頭部を叩かれた。少女は崩れ落ちた。
「止めろおっ!」
 シュウの悲痛に満ちた叫びが響く。
 その時、少女を打った男の体が宙へともんどり打ち、背を下にして倒れ落ちた。別の男が尻もちをつく。
 群衆の中から一人の、もう一人のビストリアンが飛び出し、少女を両腕に抱えると、シュウの前へ出た。
「恥を知りなさい、人間達よ!」
 白い毛で覆われたそのビストリアンが声を上げる。その声には強い意志と、誇り高さがある。
「何と情けない……弱き者を大勢で囲い、無抵抗の者に暴力を振るい……あまつさえ、それを庇う勇気ある者にさえ、その汚らわしい爪を立てるとは……!」
 シナスタジア国王妃テレサはそう言い放ち、群衆を睨み付ける。
「貴方達は……清い心がもたらす平穏と平和に飢えている」
 テレサはゆっくりと、低く、威厳ある声で、そして哀しげに語る。
「そして、誰かと争い、熱してしまっている心の渇きを癒してくれる平安に渇いている。ご自身の体を尊べる美しき品位の無き裸の姿。そして分かって、包んで、愛してくれる心が無い……」
 テレサの目から涙が溢れ出る。
「そしてそれは……この私もそう……」
 シュウはテレサの言葉を聞いて思い出した。それは現世において、一人の修道女であった女性が言った言葉。その修道女の名はアグネス・ゴンジャ・ボヤジュ。後にマザー・テレサと人から呼ばれ、愛され、尊ばれ、そして世界で最もその死を惜しまれ、悲しまれ、その後もその存在が人の心から消えることのなかった偉大な女性……
「あ? 何言ってんだ、このビストリアン?」
「ビストリアンのくせに生意気な……」
「この盗っ人に俺達はしかるべき制裁を加えてるだけだ!」
「目には目を、だ!」
 群衆から怒りと憎悪に満ちた声が再び湧き上がる。
「目には目をでは、この世界は暗闇に包まれてしまいます!」
 テレサは言い放った。
「この子達が盗みを、罪を負ったのであれば、それは償われなければなりません。ですが、貴方達はどうなのですか? ここまでこの子達を追い詰め、傷付け、野次り……この子達の償いはもうこれで十分なのでは? そして、この子達をこうして必要以上に追い詰め傷付けていることを正当化している、貴方達自身の罪は如何されるおつもりですか?」
「屁理屈ばかりの奴だ!」
「ビストリアンのくせに!」
「お前等は生まれ付いたその場から罪だらけなんだよ! 生まれたこと自体が罪だ!」
 テレサの目がかっと開く。
「お黙りなさい!」
 シュウと少女の二人は、その声に一瞬びくりとした。何と鬼気迫る声なのか。
「生まれたこと自体が罪? よくもそのようなことが言える……!」
「……この連中には何を言っても通じない」
 シュウがテレサに言った。
「彼等は憎しみと怒りで、その耳と心を閉ざしたままだ」
「……何と言うことか」
 テレサが哀しげに呟く。
 そこに別の怒号が飛ぶ。
「何をしているか! この騒ぎは何だ!」
「すぐに全員、この場から散れ!」
「この集まりは解散だ!」
 群衆の中に一本の道が出来た。まるで映画「十戒」の一シーンにあるように、人々の海原が真二つに左右へと離れ、その合間を金色の鎧に身を固めた者が三人現れた。
「近衛騎士団だ……」
「ちっ、真生者様だよ」
 空間近衛騎士団の内の一人が、テレサとシュウ、そして傷付いた二人の子達を見下ろす。
「ここで行われていたことは私刑行為か!」
 その者が群衆に向けて大声を張り上げる。
「何人たりともそのような行為を許されることはない! 如何なる理由があろうと、王国の法の下ではそれを許さぬ!」
「ですが……」
 群衆の内の一人の女が言う。
「ですがも何もない! たとえ相手がビストリアンであろうと何者であろうとだ! ビストリアンに対しての差別、虐待、そしてそれに準じた行為は禁じられている!」
「そいつ等は盗みを……」
 その声に対し黒猫の少女が叫ぶ。
「だからあたし達は盗みなんてやってない! 店の物を見ていただけだ!」
 騎士団の一人が群衆に向けて言う。
「この子達に盗みを働かれたと言う店の主はここにいるのか?」
 少しの間の後、小太りで背の低い男がおずおずと前へ出て来た。
「この子達が盗みを働いたと言うのは真(まこと)か?」
「は……はあ……あの……」
「真か偽りか問うている! 己の心に正直に申せ! 虚偽を申せば、それは間もなくして分かることだ! 我々がそれを調べ上げる!」
「あ……あああ……」
 情けない声を上げた男は、首をぶるぶると横に振った。
「ビストリアンなんぞがうちの店に興味を示すから悪いんだ! こいつ等は悪魔の手先なんだ! 神に仇なす連中なんだ!」
 騎士団員達は眉をひそめた。
「悪魔の手先……全く、中途転生者にはまだ神だの悪魔だのと言う者がいるのか」
「それは貴様達の心の中にある弱味が見せる妄想であると、散々言い聞かせて来たであろう!」
「我等の政策もまだ行き届いておらぬ証拠か……この者を拘束する」
 騎士団員二人が店主の両腕を銘々に抱える。
「そなたには矯正施設へと赴いて貰おう。そしてこの場に集まる者! そなた達もこの私刑行為の共犯者である! 手を下さず、ただ傍観していただけの者も同罪だ!」
 騎士団員のこの鶴の一声で、群衆は瞬く間に散り散りになった。そして、この騎士団員がテレサに向けて言う。
「悪いことは言わぬ。この町は……そなた達には厳し過ぎる。早く去るが良かろう。だが先ずは、その子達の怪我の手当てが必要だ」
 テレサがそれに返す。
「窮地を救って戴いたこと、心よりお礼申し上げます。手当てのほうは大丈夫です。この私が致しますので」
「……そうか。分かった」
 そう言って、騎士団員達はテレサとシュウの元を離れた。テレサはすぐに自身の荷物の巾着袋から包帯や傷薬等を取り出した。
「旅の途中でこうした同胞達と出会って参りました。包帯はまた何処かで購入しなくてはなりませんね。薬は……薬草さえあれば作れますが」
 テレサは医療の心得もあるようだ。
「人間の男性……貴女にも何と言ってお礼を申し上げればいいか……」
「あ、いいえ」
 シュウはテレサの瞳の光に、その心を一瞬で惹かれていた。何と神々しく、そして時に猛々しく、そして力強く、慈愛に満ちた光であろうか。彼女は猫の姿をしてはいるが、そんな光を持った目を持つ者には、人間にもそうそういるわけではない、シュウはそう思った。
「私はテレサと申します」
「テレサ……」
 シュウはテレサの先程の言葉を思い出した。マザー・テレサの言葉が、その福音名と同じ名を持つこのビストリアンの口から放たれるとは……シュウにとって、それはまさに奇縁としか思えなかった。
「貴方は?」
「僕は……シュウです。安西崇」
「シュウ……アンザイ・シュウ……では、シュウとお呼びして差し障りありませんか?」
「勿論。皆、あまり苗字では呼びませんから」
 テレサはにこりと笑みを浮かべた。
「そしてお嬢さん、貴女のお名前は?」
 テレサに包帯を巻かれた黒猫の少女が答える。
「私……サム。この子は弟のハンニバル」
「そう。サム、よく頑張ったわね。偉いわ」
 テレサはサムの弟ハンニバルの傷に薬を塗りながら返す。
「あの……この子等の傷は……」
 シュウがテレサに訊く。テレサは手を止めずに言った。
「この程度なら休んで、栄養を付ければ大丈夫でしょう。私達は人間よりも回復力が強いですから」
「あ、あの……シュウ!」
 サムがおどおどしたような声で言う。素っ頓狂に声の裏返った、そして緊張した声だ。
「あ、あ……ありがとう! 私達のために……貴方にまで、その、怪我を……」
「ああ、気にしなくていいよ。こんなの怪我の内に入らないさ」
 軍人時代に銃で撃たれたこともある。それから比べれば、実際に大したことではない。シュウはにこりと笑って返した。
 先程まで泣いて叫んでいたサムの表情にも笑みが戻る。そして、安堵と感謝の涙が流れた。

 詳しい話を聞くこともなく、シュウはディーリゲンチアの村に戻った。そのまま妻と息子をクウィンチリウスで捜そうと言う気にはどうしてもなれなかった。広い街の中を虱潰しで捜すと言うことにも無理があるのだが、それよりもビストリアンと言う異種族の存在と、それに向けられた人の憎悪を目の当たりにした衝撃が強すぎたのである。妻や息子があのような群衆の中で、同じように石や棒を手にしているとはとても考えたくなかった。
「ビストリアン? シュウ、会ったの?」
 夕食の場でエレナが訊く。その表情に、まるで嫌な物でも見たかのような様子がありありと浮かんでいたことを、シュウは見逃さなかった。
「ああ……エレナ、あのビストリアンって言うのは……」
「私も詳しくは知らないわ。ただ、皆あれを嫌がっている。だって、犬とか猫とかの姿で喋るんでしょ? 昔の子供向けのテレビ番組でならともかく、実際となると気味が悪いもの」
「気味が悪い?」
「おまけにあちこちで盗みや、人を傷付けたり、汚い虫やら病気まで持っているって話でしょう? あんな連中についてだなんて、食事中にする話題でもないわ。シュウも気を付けて」
 エレナはそう言うと、ナプキンで口を拭い、フォークを皿の上に置いた。シュウはエレナに問い掛ける。
「君は……彼等に会ったことがあるのかい?」
「私が? あんなのと? 冗談じゃないわ!」
 エレナは声を上げる。
「シュウ、いい? 次にビストリアンなんかに出会っても、関わっちゃ駄目よ。そのほうが貴方のためでもあるの。あんなろくでもない、下等種族になんて……」
 シュウは確信した。このエレナも心を閉ざしている一人なのだと。

 翌朝、シュウは再びエレナの家を出た。ここにはもう戻ってこない。エレナには確かに世話になった。助けられた。だが、一宿一飯の恩義はもう十分に返したとシュウは思っていた。そしてシュウは駅へと向かった。クウィンチリウスに改めて向かうためだ。そして、あのテレサと名乗ったビストリアンの女性を追うために。


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